こんにちは。松井周です。ご無沙汰しております。
松井周の標本室は今年で三年目なんですが、その締めくくりとしてまたイベントを開催いたします。
題して「標本の湯」です。
温泉に行くような気分で遊びに来て欲しいと思います。
松井周の標本室のメンバーたちの作品がところどころに湧いておりますので、どうぞ浸かっていって下さい。
ずっと作り手と受け手という関係が窮屈だなと思っていました。もっとお互いが浸透し合うような時間や空間ってないかなと標本室をやってきました。標本室は誰がどんなふうに作品を始めてもいいし、いつでも感想や意見を言っていい、オンラインのスペースです。その人が興味を持っていることならどんどん掘り進めてもいいし、その経過は随時公開されていきます。そこである程度の形となったものが、今回の標本の湯です。
昔、太田省吾さんという方が言っていました。劇場には社会的役割を脱ぐために来て欲しいと。僕はこの言葉がとても好きです。しかし、そんな簡単には脱げないよーとも思います。だから着たまま脱ぐ。そんなふうにできないものかと考えて標本室をやっています。私たちは脱げない社会的役割を負いながら、それでも染み出してくる「自分の素」を煮詰めて固めて、「私という標本」を精製しています。標本とは、いわば、その人の成分です。資本主義社会の中ではほとんど見向きもされず、価値を認められていない、癖やズレや欲望です。
そんな標本の素が詰まった空間こそが標本の湯です。とんがってもいないし、逆にわかりやすくもないかもしれません。それに「私という成分が染み出してるから浸かりにきて」と言われたら、躊躇するかもしれませんね。
でも大丈夫です。美味しい鍋には色んなダシが必要なように、半分はみなさんの成分によって出来上がるものになっています。(標本の湯ではなく、標本の鍋というタイトルにしても良かったか? いや、出入り自由という部分は大事だからやはり標本の湯か。)
とにかく、リラックスして楽しめる空間になっています。
服は脱がずに楽しめる温泉で、どうぞ色んな成分をご堪能下さい。
松井周