そう言えばこの作品は、サンプルと名乗り始めての最初の作品でした。
 「人間ではなく、人間の標本、人間もどきを描きたい!つまり、ゾンビ。
 何故なら私たちはもうゾンビだから!」と当時(2007年)は意気込んでいたのですが、
 最近の自分の作品と比べるとかなり「人間」らしい作品だと思います。
 何とかして「ゾンビ」に抗おうとするあがきのようなものを感じます。
 資本主義と伝統行事と生殖の問題に束縛されつつ、ジタバタしています。
 今回の再演が、そんな「人間」であった頃の日本人に対するレクイエムのようだったら
 ちょっと悲しいので、せめて「ゾンビ」的な愛嬌をふりまきたいと思っています。
松井周
去年『永い遠足』をみたとき、
 現在の日本の演劇の王道はサンプルなんだ、としみじみわかった。
 サンプルは、日本演劇の先人たちの築いた遺産を、みずからの財産としている。
 そしてそれをただ保存するのでなく、現在にたいして運用してる。
 同時代にサンプルのような堂々たる嫡子がいてくれて、心強い。
 しかも彼らが今後ますます堂々としていくだろうことも、まちがいない。
 そうなるための地力が彼らにあるのは、上演に立ち会えば容易にわかる。
 サンプルのような集団、松井さんのような作家が存在するなら、
 僕は僕でミュータントとして精一杯やろう、とおもう。
岡田利規(チェルフィッチュ)
舞台写真
 
 
 
(c)青木司
<あらすじ>
 山と川に囲まれた村。
 元々の村はダムの建設によって沈んでいる。
 大型スーパーの進出はその村を危機に陥らせる。
 村民は伝統を蘇らせ、村おこしをはかろうとする。
 村のある家に、都会から男がやってくる。
 娘と結婚するために。
 村では今、外からの血が必要とされている。

