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創作日誌8/10 野村

2012.08.11

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今日は午前中、清津峡地区をあいさつに回り、午後は、大地の芸術祭・越後妻有トリエンナーレ2012の他の作品を観に行きました。

いくつか観たなかで、一番印象が残ったのはボルタンスキーの『最後の教室』。インスタレーション自体を楽しんだのは言うまでもありませんが、廃校を使ったインスタレーションという点では、私たちと同じ土俵の作品なので、いろいろと参考になることがありました。
あと、作者・ボルタンスキーはこの作品を、冬季に下見に来たことから着想したとのこと。そう言われてみると、あの薄暗闇には、雪で閉ざされた建物の内部の感じがきちんと紛れ込んでいたようにも思えます。

遡って私たちの最初の下見は、2月の末。大雪の降る中の移動でした。
僕の人生では初めて見る雪の量、どこもかしこも雪だらけで見通すことが出来ない。雪が止んだ翌朝は早くから皆屋根から雪下ろしをしていて、屋根の上の雪は分厚く、これはたしかにすぐ雪下ろしをしないと、放っておいて家が安泰なまま春がくるとはとても思えないさまでした。

午前中のあいさつの最後に、小出地区の山の上のほうを訪れました。急な勾配の坂をあがるといきなり開けた棚田地帯があり、その中に2世帯だけ家があります。ここは2月の下見のときにも訪れていたのですが、今日見た美しい緑の景色からはまったくそのときのことが想像できませんでした。いわれてやっと気がつくほど、全く様相が違うのです。

展示を見て回っている最中に少しだけまつだい農舞台にも寄りました。ここも2月の下見で訪れていたのですが…、見えるものが全然違う! あらゆるものが覆い尽くされていたのだなと思うほど、展示物があり、開けた田園地帯に突然現れる高床の農舞台はちょっと異様で、夏がマッチしている建物なのか、冬がマッチしている建物なのか、そのあたりがちょっとわからなくなりました。

昨日話題に出した「REVERSIBLE」はこの妻有地域自体にもある。それが、夏と冬、という両面。
私たちはいま、凌ぎやすい気候で、あおあおと稲穂や木々が茂るこの地域に滞在して作品を制作しているわけですが、ここに暮らす方たちは、毎年、この夏と冬のダイナミックすぎる違いを当たり前のこととして受け入れて生きている。
今は「夏」だけれど、「冬」という裏面の背景をまったく考えないで作品をつくるということは、私たちにはできないだろうと思います。
その意味で、2月に下見に来たのはとってもよかったな、と振り返りました。