最近に何となく小学生の時の思い出を探っていたら、一年生の時の出来事が出てきました。
国語の授業のとき、担任の先生、たぶん五十代後半くらいの、七才児からはおばあちゃんに見えていたのですが、
その先生が、教科書に載っていた「スーホの白い馬」というモンゴルの民話を音読していました。
その後半、クライマックスの馬が死ぬところで、先生が読みながら号泣しはじめまして。それでもなお泣きながら読み続けていて。
私はそれを見て、なんとも不安な気持ちになり、だんだん怖くなりました。大人が泣いているのを生で見たのは、たぶんあれがはじめてでした。
しかし一方で同級生の神田くんはそれがおかしかったのか、勢いよく笑いはじめて。周りの何人かも、たぶんそれにつられて笑いはじめて。
その笑いを聞いた先生は泣いたまま怒り、「何がおかしいのか」と、神田くんを立たせて肩を小突きながら、激しく叱責しました。
神田くんはなにも答えず、しばらくそれが続いて。
それからどう収まったのかは覚えていないのですが、その一連がとても怖かったというか、ざわざわした気持ちになったことを覚えています。
という話を思い出したのにつられて、似た話をひとつ思い出しました。
小三のとき、階段のどのくらいから飛べるかという遊びがはやり。
最終的には十四、五段から、かなりの高さから飛び降りていたのですが、ある日のこの遊びに、活発な女子の坂井さんも参加していて、宮内くんとの一騎討ちになり。
好勝負だったと記憶しているのですが、最終的には着地に失敗した坂井さんが転倒し、顔に擦り傷を負ってしまいました。
坂井さんは他に怪我もなく、けろりとしていたのですが、そのことを聞いた担任の女性の先生が、激怒しまして。
最初はそんな危険なことをするなと、全体に怒っていたと思うのですが、徐々にそれがへらへらしていた坂井さんに向きはじめ。女の子がそんなことをするなと。
最後には、かなりの剣幕で、女の子なのに顔に傷が残ったら一生が台無しだ、だからもうやめろという旨のことを、まくしたてていました。
その言いっぷりと怒りっぷりのことを、思い出しました。
長々と失礼をしました。怒る大人の話を思い出した次第です。
(高橋義和)